クリスマス・ストーリー

category:ニューヨーク
tag:クリスマス Kの話 ニューヨーク人模様

人生は映画より奇なりから5日分のブログネタをくれた、K のクリスマス・ストーリー。

高級売春婦を連れて日本に行ったり理科の実験でダイナマイトを作ったり、マフィアのガードマン等をした K がニューヨークに来たのは今から10年前。

その時の話を彼は、こんなセンテンスで始めた。
"When I was a homeless, I slept in the subway."
「ホームレスだった時、地下鉄で寝ていたんだ。」

友人 J は、「桜またブログのネタだよ。」とすかさず言った。K は笑みを浮かべて、"Shall I go on?" 「続けていい?」と静かに語り始めた。

彼は、地下鉄の7番線で夜を過ごしていた。季節は11月。夜の冷え込みが厳しくなる頃であった。2,3日そうして過ごしていると、おっちゃん がやって来て、「お前、家ないのか?」と聞いてきた。

「ああ、ないよ。」と K が答えると、おっちゃん は、ホームレスとしてニューヨークで生き残る方法を語り始めた。

まず、7番線と言う短い地下鉄を使ってはいけない。地下鉄は、AラインかCラインが一番良いと教えてくれ、さらに何箇所か覆面警官のいる駅も教えてくれた。彼らは、2回同じホームレスを見たら、電車から追い出すそうである。

それから、裏口の壊れたアパートを2箇所程教えてくれた。裏口は住人に見られることなく、直接ボイラー室に繋がっており、まさに天国。「絶対に見つかるなよ。ここが塞がれたら、お前は何十人ものホームレスを敵に回すんだからな。」おっちゃんは念を押した。


それから、食事場所にも連れて行ってくれた。

実は、K は、一度だけ教会の食事サービスに行ったが、英語が話せず、ホームレスにしては小奇麗すぎて、食べさせてもらえない事があった。以来躊躇してしまい、食事をもらいに行けず、物乞いでもらったお金でチョコレートやパンなどを食べて過ごしていた。

おっちゃんは、スペイン語の通じるカソリック系の教会に K を連れて行き、そこの修道女の人と話して彼に食事をくれるように頼んでくれた。

彼は、そこで2週間ほど食事を貰った。


そのうち、建設現場で仕事をするようになり、アパートも借りられるようになった。中古車も購入できるようになった。大工として、自分用の道具などもそろえ始めたのが、3ヵ月後。ニューヨークの寒さは一段と厳しくなってきた頃である。

彼は、買い揃えた道具を持って、自分に食事をくれた修道院へと向かった。

その修道院には大きな壊れた鉄の扉があった。年老いた修道女達では開け閉めがとても出来ず、その為、食事を貰いに来るホームレスや低所得者の人達数人に開けてもらい、夜になると閉めてもらっていたのである。


彼は、問題の修道院の門を叩き、「覚えていないだろうけれど、3ヶ月前あなた達は俺を助けてくれたんだ。だから、今度は俺が皆を助けたい。門を直させてくれないか。」と頼んだ。


時間は夜だったそうだ。門越しに、2メートル近い大男が、電ノコやら金槌やらをもって現れたのである。さぞかし修道女達も驚いたであろう。初めは怪訝がっていたが、彼の頼みを聞き入れてくれた。

修道女によれば、もう十年近くも壊れたまま放置されていたそうである。彼は、十数年の問題を、数時間程度で解決し、その場を去った。

それからまた数週間後、K は おっちゃん に街で偶然出会った。
「お前、門直したんだってな。修道女の一人がお前の事覚えていて、俺が連れてきた奴だって教えてくれたよ。俺も鼻が高いぜ。」
おっちゃん はそう言った。


「今でも、時々その修道院の前を通るんだ。まだ、門はちゃんとしている。それがうれしくってね。」

Kは微笑んだ。


彼は今、大工として働いている。短気なのが玉にキズで、定職についても現場でケンカをして辞めてしまう事が多い。けれども腕が良いので、友人のデザイナー J はよく彼と組んで仕事をしている。

この話を聞きながら J は、「これは、クリスマス・ストーリーだね、桜」と言った。鼻歌を歌いながら、仕事に戻った K を見つめながら、私もそう思った。



付録:
K の話は過去ログで。

人生は映画より奇なり:K と日本の意外な関係
理科の実験でダイナマイト:コロンビア天才児がグループにいると…
天才児のその後:映画「トラフィック」の世界そのまま
マラリア・ワクチンと南北問題:コロンビアの誇り高き学者の話
足を洗わせた母の力:世界の裏を見たKの半生から抜け出した理由




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2008年12月25日

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